FX スイスフランの急騰事件について
【急騰したスイスフラン】
2015年に入り、スイス中央銀行がこれまで行っていた自国通貨への為替介入を撤廃するという発表を行いました。これまでスイスはユーロ/フラン(EUR/CHF)1ユーロ・1.20スイスフランを上限とするようにフランの価値が上がろうとすると無制限に為替介入を行っていました。しかしこれを今後行わないという発表を皮切りに一気にスイスフランは各国の通貨に対して急騰していきました。
国際金融を語る上でスイスフランの重要度は非常に高いと言われています。
「ゴールドよりも堅い」と言われたスイスフランは、言うまでもなくスイスの通貨でありまた国境を隣にするリヒテンシュタインの通貨でもあります。また一部、イタリアとドイツでも使われています。
【スイスフラン急騰によるFX業者への影響・ネットの反応】
これまで安全に投資できるとされていたスイスフランが、大急騰を見せたのですからFX市場にもとてつもない影響がでました。
とにかくスイスフラン/円(CHF/JPY)1月15日は始値115.143から終値が136.228まで急騰を見せ、さらにその日の高値は、166円台にまで上がるという驚異的な上昇を見せました。
これにより巨額の被害を蒙った投資家の数はかなり多かったといいます。
「1夜にして含み損が数千万円に上った」という書き込みや、
「口座残高が突然マイナスになった」
5000万、6000万円は当たりまえ、中には1億を超す損失を出したなんて投資家もいたそうです。
さらに、
「死にたい、自殺したい」「人生辞めます。」「こんな日が来るとは思わなかった。」
数千万円の損失を数時間の内に経験すれば、誰もがこんなカタストロフィを実感するでしょう。
そしてこれは個人投資家だけの責任ではなく、証拠金を預かるFX業者の対応にも非難の声が上がりました。
マネックスFXに関してはスイスフランの急騰による損失の未回収金が1億6000万円になったと伝えられ、英国発のFX業者アルパリUKはこのスイスショックを原因として破綻し、アルパリの日本法人についても大きな影響を与えました。
この他にもニュージーランドのエクセル・マーケッツなども経営が困難になるなどスイスフランショックの破壊力は壊滅的だったようです。
【国内・アジアは欧米よりは被害が少なかった】
スイスフランショックの破壊力は上述した通りですが、不幸中の幸いで日本国内における損失被害は欧米よりは少なかったといわれています。
また国内FX業者は、このスイスフランショック後の対応として、レバレッジを変更したり、スプレッドを変更を行い、未回収金や追証金を請求したりとその後の処理に追われています。
国内大手のFX業者であるSBI FXトレードでは、ロスカットやレバレッジ規制を整備・徹底していたため国内における損失は「限定的」であったとしながらも、今後もこのような不足な事態に備えるべく、スイスフランショックを調査・分析したレポートをまとめました。
そしてスイスフラン/円(CHF/JPY)の新規の注文を停止するという措置に至りました。
【スイスフランは堅いという神話】
やはり今回のスイスフランショックは、これまで対ユーロに対する無制限為替介入など変動相場制でありながら、安定的な通貨として信頼されていたことが一つの要因であったと思います。
またスイスは永世中立国であり、有事の際に強いといわれ、資本逃避通貨としての特性を持っています。こういったスイスフランを持っていれば安心こそすれ極端なリスクはないだろうという幻想を世界中の人々が持っていたことも大きな要因であったと分析します。
今回のスイス中央銀行の相場維持の放棄宣言や、-0.75金利の発表を予期できた人などいるはずもありません。
ただ今回の歴史的大急騰は、ぜひこれから教訓にしていきたいですね。